撮影:吉見崚
展覧会
コンセプト
34°42’12”N 135°29’41”E
落書きはまるで生き物のようだ。彼らは、街中に突然に現れ、独自の生態系を作っては、寿命が来たかのように消えてなくなってしまう。そしてまた、どこからともなく彼らはやってくるのである。かつてここ梅田一帯は、大阪湾に流れ込む河川の三角州と湾内の海流や湾の埋め立てによる低湿地帯で、鳥や水生生物が生息する自然の生態系に触れられる場所であった。そんな場所はいつの間にか、都市開発とともにビルが現れ、たちまちにそんな自然は消えていった。旧国鉄の梅田貨物駅は民営化に伴って跡地売却。再開発が進み、25 年4 月にグランフロント大阪が開業。オフィス、ホテル、商業施設、マンションなどで構成され、賑わいをもたらした。知っているだろうか、現在また新たに緑地化計画が進行しており、再び都市の中に自然という生態系が取り戻されようとしているというのである。
落書き、そして、ここでいう自然というのは、循環的な生態系であるという点で類似する。だが、それは当然なことなのかもしれない。なぜならば、人間が生きている限り、我々の時代の流れに左右される気まぐれという循環に従って、いずれも人工的に人間の手によって生み出されたり消されたりするものであるからである。私は、そんな一見繋がりがなさそうな「都市で生きる落書き」と「都市における自然」の生態系というのを結びつけてみようと試みた。世界中国は違えど、同様に経済の発展とともに都市化が世界中で広まり、世界中に人工的に都市なるものが生み出され、その結果として改めて、我々は自然や環境と向き合わざるを得ない時代になってきた。
そんな中で、本展では、私自身がリサーチする中で関心の湧いた世界中の都市を選抜し、そこにおける落書きという生態系が入り口になり、私の作品がボンド的な存在として、都市と自然との関係性により多くの人々の目が開かれることを促す存在になることを期待している。
プロフィール
1986年兵庫県生まれ。
日常に溶け込んでしまった“痕跡”に焦点を当て、その奥に存在するであろう目には見えない不確かな部分から作品を制作する。忘却し消えゆくものの時間を保存し、時間感覚の本質を問いかける。
主な展覧会に、「 奈良・町家の芸術祭 はならぁと2022 」天理市(2022年 / 奈良) 「34°40ʼ33”N 135°29ʼ55”E」Marco gallery(2022年/ 大阪)個展、「Imitation or mimic」千鳥文化ホール(2021年 / 大阪)個展、「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2019」記念碑台(2019年 / 兵庫)など。2020年から大阪北加賀屋にあるシェアスタジオ「Super Studio Kitakagaya」を拠点に活動。
会場