展覧会概要
この15年間で、日本では電気自動車やSNS、デジタル化といった言葉が様々な文脈で語られ、技術革新とは世界の流れに追いつくことを意味するようになった。そのようにして加速化する現代にさらに拍車をかけるように、新型感染症の世界的大流行に対応するために、我々は様々な生活の変化を受け入れるようになった。その結果、社会の土台となるコミュニケーションという行為の変化についてとどまって考える機会もないまま、誰かと関係を築くことはますます便利に、そして効率的になっていった。
現代では、一人ひとりが自身の物語を不特定多数に届けることができるようになり、我々は他者を消費し、他者に消費される社会の中で生きている。現代美術を代表するアンディ・ウォーホルはメディアの力によっていずれ人は皆有名人になりうる時代を60年代に予見したが、消費の行き来の中から新たなコミュニケーションの形が生まれることを彼は想像できただろうか。個々人が連なり生まれる制御のできない数々の社会のうねりや波に、アクセスしたり離れたりしながらアイデンティティについて、他者についての考えを形成していくこの時代から、この先をどう予見するべきだろうか。そして未来に何を残すべきか。
この命題は当然現代美術のあり方にも影響をしている。語り継がれていくべき物語とはなにか。本展では、うめきたSHIP HALLを現代社会を航海する方舟(アーク)ととらえ、加速化する社会の中で我々にとどまることを投げかける作品たちが展示される。未来の人たちが現代を振り返るときに感じるであろうノスタルジーのような感覚をシミュレーションする、まるで廃墟のゲームセンターのような本展の成り立ちは、これからの時代のカルチャーを牽引するべく本芸術祭の姿を逆説的に示す。語り継ぐべき物語たちが閉館後の暗闇の中でも鈍い光でうめきた広場を照らす姿は、願わくばノアの方舟のように我々に社会の荒波を乗り越える助けになることだろう。
イベント
キュレーターズトーク
日時:2/12(日)17:00〜18:00
登壇者:丹原健翔
会場:グランフロント大阪 うめきたSHIPホール
キュレーター
アーティスト
菅野歩美, きゅんくん, 高田冬彦, マイケル・ホー, 山形一生, スクリプカリウ落合安奈
会場