© 草本利枝/Toshie Kusamoto
リサーチプロジェクト
コンセプト
「Study:大阪関西国際芸術祭」では、「NISHINARI YOSHIO」の今後の仮想課題として、後継者問題に焦点をあて、数年に渡るプログレスなプロジェクトを立ち上げる。
近年、活動拠点である大阪市西成地域に急速に増えつつある在日外国人。かつて日雇労働者の街として全国各地から労働者が集まり、その中で繁栄してきた同地域の商店街は、労働者の高齢化、不況による失業など時代の変遷のなかでシャッター街と化していたが、ここ10年ほどで中国系・ベトナム系のカラオケ居酒屋や飲食店等が大量に入居している。また、少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、技能実習生として来日する外国人も多く、西成区の居住者は増加傾向にある。ただ、同じ地域に生活する住民にも関わらず、旧住民とのつながりはなくその生活実態や背景を知る機会はほとんどない。そのような中で、彼/彼女らとの接点として「ファッション」はひとつの可能性があると考え、「NISHINARI YOSHIO」の服づくりワークショップを重ねることで、将来的にはブランドの共同制作者として活動を共にしていくことをめざす。
当初より美術家・西尾美也と地域の高齢女性との間で起こっていたズレがコンセプトとなっているブランドにおいて、在日外国人との文化や生活習慣の違いが地域の中ではネガティブな印象として語られがちだが、そのズレこそ重要なポイントであり、活動を通じて地域住民との間に起こるズレをきっかけにブランドの新たな展開に着手したい。
今回は、在日外国人とのプロジェクトに向けたリサーチを始動。彼/彼女らをモデルに新作コレクションの写真を「たんす」にて発表する。
https://nishinariyoshio.com
プロフィール
美術家の西尾美也が、西成区山王にある創造活動拠点「kioku手芸館たんす」に集まる地域の高齢女性たちとの共同制作により、2018年に立ち上げたファッションブランド。地域の女性たちによる予想を裏切るアレンジや発想の飛躍、西尾が考えるイメージとの齟齬など、予期せぬズレをコンセプトの一つに、作業着=日常を生きるための服を提案している。
「NISHINARI YOSHIO」の洋服は、メンバーが西成に暮らす身近な人を想定し、その人のためのジャケットやパンツをデザインするというお題から作られたもの。「たんす」に集まる不要になった生地を活用し、1点ごとに布違いで制作していることも特徴のひとつである。
これまでに阪急メンズ大阪(2018)、あべのハルカス(2019)、西武池袋本店(2022)、仙台フォーラス(2022)などの商業施設での展示販売のほか、大阪関西国際芸術祭(2022)、せんだいメディアテーク主催「最後のファッション」(2022)で写真展を実施するなど、アートとファッションの領域を横断しながら新たな表現領域を開拓している。
https://nishinariyoshio.com
西尾美也
美術家。1982年奈良県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。文化庁芸術家在外研修員(ケニア共和国ナイロビ)、奈良県立大学地域創造学部准教授などを経て、現在、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科准教授。装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、市民や学生との協働によるプロジェクトを国内外で展開している。
http://yoshinarinishio.net
会場
イベント
ワークショップ「先代の柄を縫う」
「NISHINARI YOSHIO」が展開する商品には、昔からあるもの=「先代」がテーマになっているものがいくつかあります。それらのオリジナル図案を活用し、古着にアップリケや刺繍を施すことで、新たな価値を与えるオリジナルウェアを制作します。
日時:1/28(土)、29(日)、2/1(水)、3(金)、4(土)、5(日)、8(水)、10(金)、11(土)、12(日)16:00~19:00
会場:kioku手芸館「たんす」
持ち物:リメイクしたい洋服
参加費:500円(材料費込み)
*予約不要・出入り自由
*所用時間は各自の作業ペースによりますが、簡単なものであれば30分程度、選ばれるテーマによっては数時間かかりますが、途中で持ち帰ることも可能です。
*こちらで準備した古着から選んでいただくこともできます。ただし、レディースサイズのみとなります。