作品
《不可視の知のためのスケッチ 20191116155038、20191117114412、191117182723》(2022)
大量の仏画を学習データとして機械学習し、独自に解釈した仏画(描線の集合)をプロットしていくシステム/マシンによるドローイング。Tensorflowなど、いくつかの既存のフレームワークを組み合わせて独自に構築したシステムが持つ知の源泉は、私たちのインターネット上の素行を事細かに記録したビッグデータであり、描かれた仏は現代人の欲望の集積から錬成されたイメージともいえる。出展されているドローイングは、当初作家の手によって運搬されるはずだったが、一時行方不明に。後日、発見され群馬の倉庫から運送業者によって輸送され、大阪にたどり着いた。
《Untitled Drawing by a Device for “Graffiti” #11 (seen the sea) 》(2022)
装置によって描画されたドローイングに、自分が好きな茅ヶ崎の海を見せようと2022年6月に自主企画した2日間だけの野外展『作品に海を見せる』にて展示した作品。その後、都内での展覧会を経て群馬の倉庫に保管されていた同作品は、本展のために作家の手によって運搬され再び浜辺での展示を経て、ここTHE BOLY OSAKAに展示されている。輸送の途中で経由したのは「今後もしかしすると見れなくなるかもしれない海」。静岡県御前崎市の原子力発電所の西側に位置する浜岡砂丘にて一晩展示され、作品は原発が見える海を眺めた。
《Untitled Drawing by a device for “Graffiti” #8 (pulled / broken) 》(2022)
2022年1月にPARCO MUSEUM TOKYOにて開催されたドローイングをテーマにしたグループ展「Drawings – Plurality」にて発表した作品。作家の代表作であるドローイングマシン《A device for “Graffiti”》によって描画された木製パネルを電動ウィンチを用いて牽引し破壊。もともとは空間に張り巡らされたワイヤーも「線」の要素としていた作品だが、グループ展終了後、割れた形状を保てるよう支持体を加工したことで輸送が可能になり、電動ウィンチが無くても展示できるようになった。
「作品を運搬する」(運搬:やんツー、撮影:荻原楽太郎、2023)
作家自らの手によって作品を運搬し、そのプロセスを300枚の印刷された写真でホテル非常階段にアーカイブ展示した。現代社会においてエッセンシャルである運送業という営みをロールプレイし、輸送過程を公開することによって、通常人々の意識が及ばない裏側の領域に光を当て、改めて物を運ぶという行為について考えてみる。やんツーの作品は群馬県高崎市の倉庫から、石毛健太の作品は神奈川県海老名市のアトリエからそれぞれ運ばれ、一部の作品は野外での展示を経て目的地の大阪に向かうが、高速道路走行中に吹雪に遭い運送は難航する。
※1F〜6Fの階段部分の展示は11:00〜15:00はご覧いただけません。
プロフィール
1984年、神奈川県生まれ。美術家。セグウェイが作品鑑賞する空間や、機械学習システムを用いたドローイングマシンなど、今日的なテクノロジーが組み込まれた既製品、あるいは既存の情報システムに介入し、転用/誤用する形で組み合わせ、インスタレーションを構築する。先端テクノロジーが持ちうる公共性、政治性、又は人間との関係性を考察し、作品をもって批評する。菅野創との共同作品が文化庁メディア芸術祭アート部門にて第15回で新人賞(2012)、同じく第21回で優秀賞(2018)を受賞。
近年の主な展覧会に、「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(森美術館、東京、2022)「遠い誰か、ことのありか」(SCARTS、札幌、2021)、「DOMANI・明日展」(国立新美術館、東京、2018)、「Vanishing Mesh」(山口情報芸術センター[YCAM]、2017)、あいちトリエンナーレ2016(愛知県美術館)などがある。また、contact Gonzoとのパフォーマンス作品や、和田ながら演出による演劇作品「擬娩」での舞台美術など、異分野とのコラボレーションも多数。
http://yang02.com
展覧会
会場